どんな仕事?
造船会社において、顧客である船主の要求に応じた船舶の建造を計画し、船主と打ち合わせを行ったうえで契約仕様を決定し、その仕様を満たす性能を設計し具体化したものを、実際に建造するために必要な生産情報の作成まで一連の設計を行う。
船を大きく分類すると商船(客船、貨物船)および漁船に分類される。世界の物流は90%以上が海上輸送に依存しており、多種多様な貨物船が世界の海でこれに従事し活躍している。
開発から引き渡しまでの過程は一般的に、船型開発→顧客への売込み→引合→技術打合せ→契約→詳細設計→建造→試運転→引き渡しの順になる。
また、設計の流れの概要は、船の基本的な性格を与える「基本設計」→船に要求される性能や機能を確保する「詳細設計(造船設計)」→建造に必要な情報を与える「生産設計」となり、後工程ほどより細かくなる。
設計作業は大きく3段階に分けられ、主要寸法・船体形状・荷役装置や機関等主要機器の仕様を決定する初期段階の基本設計、船殻設計・艤装設計からなる船舶のセクションごとの詳細設計(造船設計とも言う。以下略。)並びにこの詳細設計に基づき、建造に必要な生産情報を作成する生産設計がある。
基本設計は、まず顧客船主の要望に沿った船の全長・全幅・深さ・喫水・積載量・航行スピード・主機関出力や燃費性能等の主要目を検討し、これを実現するため基本配置・船型を計画し、コンピュータによる数値計算・シミュレーションや船型模型での水槽試験を行い、燃費性能を向上させるプロペラや船体の省エネ付加物及び安全な航行のための復原性・バランス等を分析しつつ船型開発を行う。
次に、積載貨物の種類、使い勝手に関係する船主の要望、規則要求に応じた機能・性能を満たす配置・仕様を計画し、一般配置図、居住区配置図、機関室配置図等の図面と仕様書を作成し、顧客との造船契約に至る。
詳細設計は基本設計に基づき、性能部分を含む船舶のセクションごとの詳細な設計を行うもので、構造部材の配置を検討し強度計算により寸法を決定する船殻設計、エンジンを始めとした機関室内の機器や配管を設計する機関艤装設計、レーダーなど航海計器・無線・照明、発電装置など電気関係を設計する電気艤装設計、荷役設備(クレーン等)・係船設備・居住設備・塗装等を設計する船体艤装設計の4部門からなる。なお、船舶建造には様々な機材・機器(エンジン、クレーン等)を組み込むため、この段階で当該製造メーカーと機材・機器の細部の打ち合わせを行いつつ発注作業を行う。
生産設計は、基本設計と詳細設計に基づいて、セクションごとに部材の形状や加工方法、工作精度などを決め、ブロック分割図、船殻工作図、取付図、艤装工作図、一品データ等を作製するもので、これらを基に加工や組立てが行われる。また、台・はしご等の小物を設計後にオーダーメイドで発注するとともに、必要な配管等の部品は、形状・寸法・種類・数等をデータ入力してリストを作成して工場にデータ送付し製作支援をする。
なお、上述の3段階の設計作業はそれぞれ別セクションの設計技術者が担当しており、各段階の業務の流れやセクション間の調整を円滑にするため、正確な情報伝達や有機的で密接な連携が求められる。
船舶の図面には様々なものがあるが、主に船舶計画図(基本設計)、船舶構造図(詳細設計の船殻設計)、船舶艤装図(詳細設計の船体艤装設計、機関艤装設計、電気艤装設計)の3種類に大別される。
船舶計画図は、造船製図の基本となるもので、線図により船体の形状を描くが、例えば曲面で形作られる船体表面はその形状を表すため正面図・平面図・側面図が用いられる。船の外観形状・貨物倉・機関室・荷役装置・居住区等の艤装設備の全体的配置を示す一般配置図のほかに、線図により排水量等曲線図、貨物倉・タンクの容積図、復元力曲線図等も製図される。
船舶構造図は、航行するに当たって充分な強度を持ち、衝突・座礁等の事故にも浸水を局部的に止めるような船体構造を設計するためのもので、基本的な構造配置を示す図面から船体各部の詳細な構造を示す図面に至るまで多数の構造図を製図する必要がある。
船舶艤装図は、住居設備、航海設備、係船設備、荷役装置等の諸設備の詳細について設計製図するものである。具体的には、揚錨係船装置(ウインチ)、かじ取装置、航海計器、荷役装置、昇降閉鎖装置、冷暖房装置、採光通風装置、消火・救命装置、油圧管等諸管系等、船舶には非常に多くの艤装品が装備されるので、使用目的に応じて分類されて図面が製図される。
また、船舶はその使用目的に応じた航海能力を備える必要があり、関係法令や船級協会(日本では、一般財団法人日本海事協会)が規定した構造規則に従うとともに学術研究の成果等も応用した設計を行うことが求められ、特に詳細設計の段階で留意・確認している。このような求められる構造と省エネや環境対策のための機能やデザイン性は両立しにくい側面があり、両者のバランスを保ちつつ、技術開発や設計を行うためには様々な難しい課題を乗り越える必要がある。
設計作業は従来コンパス・ディバイダ等製図器、三角定規、造船用曲線定規などを用いて手書きで行っていたが、CADシステムが進歩した現在は、初期設計用3DCADシステム、2D-CAD/CAM、3D-CAD/CAM等を利用して設計されることが多い。また、設計のそれぞれの段階で、構造解析ソフト(船体構造を決める船殻設計で利用)や流体解析・数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)シミュレーションソフト(基本設計や船型開発で利用)等の設計目的に合わせたソフトを利用する。
生産設計で各種設計図面が設計・製図された後は製造過程に移るが、まず基本的に原図→罫書→切断→曲げの工程を経る。最初の製造過程は、船体構造の型を作る原図という作業工程で、それを元に鋼材に印字装置等で罫書きする。以前は原寸大の木型を製作していたが、CADシステムが進歩した現在では、データが罫書装置に送られ、工作上必要な事項も部材ごとに自動罫書装置によって鋼材に転写される。さらに生産設計で作成された電子データは、直接各種の加工装置に送付され、切断の工程では、NCプラズマ自動切断機等で切断加工され、曲げ工程では、プレス機やベンディングローラーによる圧延・加圧が行われる。
次に、船舶の技術開発に関して述べる。その目的は大きく2つある。一つは、顧客船主の要求に応じた機能・性能に沿った仕様書を作成するためであり、もう一つは市場ニーズに基づき今後どのような製品を売り出したらよいかを調査研究し、現時点の製品と比較して高次元の機能を有する製品を開発するためである。具体的には、現在、省エネ対策、環境対策及び機能性向上等の課題で技術開発が進められている。
省エネ対策としては、船舶からのCO2排出を削減するためのより燃費の良い省エネ船型、省エネダクト等の省エネ付加物等の開発や、重油よりもCO2排出量が少ない代替燃料の船舶への活用、風力の活用、太陽光発電等の自然エネルギーや排熱エネルギーを回収し利用するハイブリッド船・電気推進システム等の開発が行われている。また、環境対策としては、CO?、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)の削減や再利用するための技術開発、機能性向上等では、摩擦抵抗・粘性圧力抵抗の減少、二重反転プロペラ、上部構造物の風圧力軽減や船首形状改良による浪波中抵抗の軽減、船体構造破損の事故調査データの蓄積に基づく船体構造の安全向上・船体強度要件の向上に向けた技術開発、北極、南極の氷の海を航行できる船舶等の技術開発が進められている。特にCO2排出削減の技術開発は、業界を挙げて取り組まれている。
これらの技術開発は、コンピュータによる数値解析で船体回りの流体の流れをシミュレーションする数値流体力学(CFD)手法や、実際のシミュレーション精度を高めて高性能を発揮するために、模型による水槽試験で繰り返すこと等を組み合わせて行われる。基本設計と密接に関わっており、基本設計の担当者が兼務して従事することが多い。
以上のように、船舶の設計・開発は、大きな組織の中で複雑な過程を経るもので、顧客船主の要請、船級規則、CO2排出削減等の環境対策等の課題が多いが、それを乗り越えて船舶が完成した時に大きな達成感を感じると言われている。また、温暖化対策等の環境問題、原油高に対する省エネ対策、人材不足等、船舶を巡る課題は、造船の設計・開発部門がこの最前線で解決していく仕事であることを実感しやりがいを感じる人も多い。
よく使う道具、機材、情報技術等
パソコン、流体解析・数値流体力学(CFD)シュミレーションソフト、船型模型、試験用水槽、2D-CAD/CAM、3D-CAD/CAM、構造解析ソフト、コンパス・ディバイダ等製図器、製図板、製図用定規、バッテン 、製図用文鎮、スケール、分度器、製図用紙(ケント紙、トレース紙、方眼紙)