結論: 失業保険(基本手当)の受給総額は「基本手当日額 × 所定給付日数」で決まります。日額は退職前6ヶ月の平均賃金の約50〜80%、給付日数は退職理由と加入期間で90〜330日。月給30万円・45歳・自己都合の場合、日額約6,000円×90日=最大約54万円が目安です。詳細は厚生労働省「雇用保険の基本手当について」をご確認ください。
いくらもらえるか不安ですよね。先に結論から。失業保険(基本手当)の金額は「基本手当日額 × 給付日数」で決まり、直近6ヶ月の給与をもとに個人ごとに計算されます。この記事では、計算式のしくみから受給スケジュール、よくある疑問まで、転職支援の現場で実際によく聞かれる内容を正直にお伝えします。
失業保険の基本:もらえる金額は「日額 × 日数」で決まる
失業保険(正式名称:雇用保険の基本手当)でもらえる総額は、シンプルにこう表せます。
受給総額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
たとえば日額5,000円・給付日数90日なら、総額は最大45万円です。「最大」と書いたのは、就職が決まればそこで受給が終わるためです。実はここが重要で、早く再就職するほど「就業促進手当(再就職手当)」が出る場合があり、トータルの受取額が増えることもあります。
まずは日額の計算方法を押さえましょう。
ステップ1:賃金日額の計算方法
基本手当日額を出すには、最初に賃金日額を計算します。
賃金日額 = 退職前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180
「退職前6ヶ月」とは、離職日の直前の完全な6暦月のことです。ここに含める賃金は毎月の基本給+固定手当が中心で、ボーナスは含みません。残業代は含まれますが、月ごとにかなりばらつきがある場合は実態に合った金額になるよう調整されることがあります。
計算例(月給30万円・残業代なしの場合)
30万円 × 6ヶ月 ÷ 180 = 賃金日額 10,000円
この賃金日額に次の「給付率」をかけると、基本手当日額が出ます。
ステップ2:給付率の仕組み
給付率は、賃金日額の水準によって**50〜80%**の間で変動する「逓減式(ていげんしき)」を採用しています。つまり賃金が低いほど給付率が高く、賃金が高くなるほど給付率は下がっていきます。これは低収入の方の生活保障を厚くする設計です。
おおまかな目安:
| 賃金日額(目安) | 給付率 |
|---|---|
| 低い帯(〜約5,000円) | 約80% |
| 中間帯(約5,000〜約11,000円) | 約60〜70% |
| 高い帯(約11,000円〜) | 約50〜60% |
ただし、基本手当日額には年齢ごとの上限額が設けられています。令和8年8月改定の上限額は以下のとおりです。
| 年齢区分 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,450円 |
| 30〜44歳 | 8,270円 |
| 45〜59歳 | 9,110円 |
| 60〜64歳 | 7,830円 |
賃金が高くても、この上限を超えて受給することはできません。また下限額(最低保証額)もあり、極端に低い金額にもなりません(ハローワークで最新の下限額をご確認ください)。
先ほどの例(賃金日額10,000円・45歳)で計算すると:
10,000円 × 約60% = 6,000円 → 上限9,110円の範囲内なので日額6,000円
月換算(30日)だと約18万円です。
ステップ3:給付日数の決まり方
基本手当を受け取れる日数(所定給付日数)は、退職理由と雇用保険の加入期間によって決まります。
自己都合退職の場合
| 雇用保険の加入期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上5年未満 | 90日 |
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
会社都合退職・特定受給資格者の場合
| 加入期間 | ~29歳 | 30〜34歳 | 35〜44歳 | 45〜59歳 | 60〜64歳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
| 1〜5年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 180日 | 150日 |
| 5〜10年未満 | 120日 | 180日 | 180日 | 180日 | 150日 |
| 10〜20年未満 | 180日 | 210日 | 240日 | 240日 | 180日 |
| 20年以上 | — | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
退職の経緯が「会社都合に近い」ケースでも、離職票の記載次第で区分が変わることがあります。納得できない場合はハローワークに相談してみてください。
給付制限期間に注意
自己都合退職の場合、待期期間(7日)が終わった後に給付制限期間が設けられます。
2025年4月の改正により、自己都合退職の給付制限は原則1ヶ月に短縮されました(従来は原則2ヶ月)。ただし、5年以内に2回以上の自己都合退職がある場合、3回目以降は給付制限が3ヶ月に戻ります。
また、正当な理由のある自己都合退職(ハラスメント・病気・家族の介護など)は給付制限がなくなる場合もあります。該当する事情があれば、必ずハローワークに申告してください。
詳しくは「自己都合退職の失業保険【2026年最新版】」もご覧ください。
受給までのスケジュール(全体の流れ)
失業保険の受給開始までの流れをざっくり整理します。
① 退職
↓(退職後10日前後)
② 会社から離職票を受け取る
↓
③ ハローワークで求職申し込み・受給資格の確認
↓(7日間)
④ 待期期間(この間は受給なし)
↓(自己都合は+1ヶ月)
⑤ <自己都合の場合>給付制限期間
↓
⑥ 認定日ごとに失業認定 → 振込(約1週間後)
自己都合退職の場合、実際に振込が始まるまで退職から約5〜7週間かかるのが一般的です。生活費の計画は余裕を持って立てておきましょう。
月給別・受給額の目安(シミュレーション)
実際の受給額がどのくらいになるか、月給別にシミュレーションしてみます。
| 月給(税込) | 賃金日額 | 日額目安(45歳) | 90日受給 | 120日受給 | 150日受給 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 約6,667円 | 約5,000円 | 約45万円 | 約60万円 | 約75万円 |
| 25万円 | 約8,333円 | 約5,600円 | 約50万円 | 約67万円 | 約84万円 |
| 30万円 | 10,000円 | 約6,000円 | 約54万円 | 約72万円 | 約90万円 |
| 35万円 | 約11,667円 | 約6,400円 | 約58万円 | 約77万円 | 約96万円 |
| 40万円 | 約13,333円 | 約7,000円 | 約63万円 | 約84万円 | 約105万円 |
※給付率は賃金日額によって異なります。上記は概算です。実際の金額はシミュレーターでご確認ください。
会社都合 vs 自己都合:どれだけ違う?
退職理由によって受給額の差は非常に大きくなります。
例:35歳・雇用保険8年加入・月給30万円の場合
| 退職理由 | 給付日数 | 給付制限 | 受給開始時期 | 総受給額(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 自己都合 | 90日 | 1ヶ月 | 退職後約6週間 | 約54万円 |
| 会社都合 | 180日 | なし | 退職後約3週間 | 約108万円 |
給付日数が2倍、受給開始も3週間以上早い。会社都合か自己都合かの判定は、ハローワークに相談する価値があります。
詳しくは「会社都合退職と自己都合退職の違い」をご覧ください。
失業保険を受けながら転職活動するコツ
失業保険は「積極的に求職活動をしている」ことが受給の条件です。
認定日を絶対に守る 失業認定はおおよそ4週間ごとに設定された「認定日」に行います。正当な理由なく欠席すると、その期間の給付がゼロになります。
「積極的な求職活動」の記録を残す 求人応募・面接・職業訓練受講などが活動実績として認められます。ハローワークで相談しただけでも1回分の活動実績になることがあります。
アルバイトは「申告すれば」原則OK 受給中のアルバイトは禁止ではありませんが、必ず申告が必要です。収入額によっては基本手当が減額・不支給になる日が生じます。隠すと不正受給になるため注意してください。
詳しくは「失業保険をもらいながら転職活動する方法」もご覧ください。
早期再就職すると「再就職手当」がもらえる
所定給付日数の3分の1以上を残して就職できた場合、残日数に応じた「再就職手当」が支給されます。
| 残日数の割合 | 再就職手当の給付率 |
|---|---|
| 給付日数の2/3以上残っている | 残日数 × 日額 × 70% |
| 給付日数の1/3以上残っている | 残日数 × 日額 × 60% |
たとえば、日額6,000円・給付日数90日のうち、60日残して就職した場合:
60日 × 6,000円 × 70% = 252,000円(再就職手当)
早期に内定が出れば、失業保険を使い切るより総額が多くなることもあります。詳しくは「再就職手当はいくらもらえる?」をご覧ください。
よくある質問
Q. ボーナスは給付額の計算に含まれる? ボーナスは賃金日額の計算には含まれません。賃金日額は「退職前6ヶ月の月給(基本給+固定手当)の合計 ÷ 180」で計算します。残業代は含まれますが、月によって大きくばらつく場合は実態に合わせた調整が入ることがあります。
Q. 受給中にアルバイトをしてもいい? アルバイト自体は禁止されていません。ただし、ハローワークへの申告が必須です。1日の労働時間や収入額によっては、基本手当が減額または支給されない日が発生します。「バレないだろう」と申告を怠ると不正受給になりますので、必ず申告してください。
Q. 受給中に就職が決まったら? 就職が内定した段階でハローワークに報告し、就職日の前日までの分を最後に認定してもらいます。所定給付日数の3分の1以上を残していれば「再就職手当」の対象になります。
Q. 失業保険の受給中に配偶者の扶養に入れる? 基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)の場合、健康保険の被扶養者には原則なれません。扶養の判定基準は健康保険の種類(協会けんぽ・組合健保など)によっても異なるため、必ずご自身が加入する健康保険の窓口に確認してください。
Q. 離職票が届かない場合はどうする? 退職後10〜14日以内に会社から発行されるのが一般的です。2週間以上経っても届かない場合は会社に連絡してください。会社が倒産・連絡不能な場合は、ハローワークに直接相談すれば対応してもらえます。
Q. 雇用保険に1年未満しか加入していない場合は? 自己都合退職の場合、雇用保険の加入期間が1年未満だと失業保険を受給できません(会社都合の場合は6ヶ月以上で受給可能)。「1年に少し足りない」という場合は、退職時期をわずかにずらすだけで受給できるようになるケースがあります。
Q. 失業保険は課税される? 失業給付(基本手当)は非課税所得です。確定申告は不要で、年末調整にも影響しません。ただし、受給期間中に他の収入がある場合は別途確認が必要です。
Q. 給付日数を使い切れなかったら? 就職が決まった時点で受給は終了します。残った日数を後で使うことはできませんが、一定日数を残して就職すれば「再就職手当」が支給されます。また、再就職後に新たな受給資格が発生する(雇用保険を1年以上かけた後で退職する)ことが多いため、「使えなかった分が消える」と過度に心配する必要はありません。
Q. ハローワークに行く前に準備するものは? 主な持ち物:離職票(1・2)、マイナンバーカードまたは身元確認書類+番号確認書類、証明写真2枚、印鑑、本人名義の通帳またはキャッシュカードです。ハローワークの窓口は平日のみ(9時〜17時が多い)のため、事前に最寄りのハローワークの開庁時間を確認しておきましょう。
本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。法改正や個人の状況により内容が異なる場合があります。最終的な判断はハローワークや社会保険労務士にご相談ください。